安井仲治(1903年〜1942年)【加筆1画像追加1】 [写真]
立教大学大学院の静止画の授業で、2週続けて安井仲治(1903年〜1942年)という写真家を取り上げました。
有名な写真家ではありますが、多くの人は知らないことでしょうね。大阪生まれの関西の写真家なので、東京ではあまり知られていないという傾向もあります。
安井仲治は戦前の前衛写真家で、《超一流》の天才です。38歳の若さで死んでいて、森山大道などが安井仲治を敬愛し私淑していて、大きな影響を受けています。
タカイシイギャラリーが、復刻版の写真集を出していて、京都店で展示したのですが、私は見ています。タカイシイさんは、ほんとうに写真が好きなのだという印象をもちました。
安井仲治の写真がすぐれているのは、いろいろな写真を撮っている多様性もありますが、その中でも2種類のすぐれた写真を撮っているからです。
一つは、私が高く評価する《超次元》から《第6400次元》までの作品です。
安井仲治 《超次元》〜《第6400次元》の写真
もう一つは《超次元》から50次元までの、典型的なモダニズムの写真です。
安井仲治 《超次元》から50次元までの写真
《超次元》から《第6400次元》までの作品は、ある種のコラージュの作品で、3枚くらいの画像が重ね焼してあるものです。コメント欄で、ご指摘をうけましたが、コラージュと言っても、写真を貼り合わせたり、重ね焼したといった普通の技法ではないものです。そのことは、安井仲治の使った技法の知識が無くても感じられるものです。コンピューターも無い時代に、精巧なレベルのコラージュ技法を開発しているのでしょうか。
安井仲治のコラージュ手法
《第6400次元》までの作品をつくる特定のテクニックがあるわけではありませんが、
一つは安井仲治の作品に見られるような重ねるという手法なのです。
ピカビアのペインティングには、同様に重ね描きすることで《超次元》から《第6400次元》までの超重層性をもった作品があります。
ピカビアのペインティングは、良いのか悪いのか分かりにくいものですが、少なくとも下に掲載した絵画は名品です。
ピカビア 《超次元》から《第6400次元》まである超重層的な絵画
ピカビアと中井仲治を一緒にはできないですが、しかし時代的には近いものがあります。それとこのコラージュというか、重ねる手法です。重ねる事で、この私たちが生きる世界の複雑さをとらえているように見えます。
次の安井仲治の作品も有名ですが、これも特殊なコラージュしているように私には思えます。
安井仲治 《超次元》〜《第6400次元》まである写真
窓から男の顔が見えるのですが、この男の顔は、特殊コラージュだと思います。そうする事で気味妙な魅力を生んでいるのですが、その魅力は、彦坂尚嘉的に言うと、《超次元》から《第6400次元》まである表現の魅力です。
もっとも、彦坂尚嘉の「アートの格付け」が明らかにしようとしているのは、普通では見えていたいこの《格》という次元の重層性だからであって、それだけが芸術を成立させたり、それだけで作品の魅力が分析できるものではありません。あくまでも多数ある要素の一つを指摘しているだけです。
それでも《超次元》〜《第6400次元》まである写真というのは、深い魅力の有る作品が多いのです。